平成28年6月第286回定例会一般質問

民進党会派の 渋谷 哲一 です。

議長のお許しをいただきまして、所見を交えながら、一般質問を行わせていただきます。

先月行われました伊勢志摩サミット終了後、安倍総理による消費増税延期の発表とオバマ大統領の広島訪問が大きな話題となりました。この二つの事案は、私たちに、「政治の責任」について、考える機会を与えてくれました。

まずは、消費増税の延期です。

安倍総理による、2019年10月までの消費増税再延期を発表は、与党自民党内にも異論がありながら、公の会議では、特別な反対論も出ず、了承されました。
その一方で、野党第一党の民進党は、増税延期を容認し、社会保障の充実策を、予定通り実施するよう訴えておりました。

実際、多くの青森県民も増税には反対しており、「何も、景気の悪い今、増税しなくてもよいのではないか。増税によって、苦しい生活が、より一層苦しくなる」と訴えております。

その一方で、日本の財政状況に懸念を示す人も多く、「このまま借金し続けて大丈夫なのか?子供たちや孫たちに、この借金を先送りすべきではない。」といった意見も聞かれます。

どちらの意見も正しいと思います。
特に、経済が長期に低迷している青森県では、県民平均所得は、全国最下位レベルであり、消費増税は、生活を脅かす大きな問題です。

さて、来年4月に予定されていた、消費税10%には、大きく3つの目的があったのではないかと思います。

1つ目は、「社会保障と税の一体改革」に示されているように、社会保障の充実です。
増税分の内、約1.3兆円を、低年金者への年6万円の給付金や、低所得者の介護保険料の軽減、待機児童ゼロのための保育所整備等に充てる予定でした。

2つ目は、財政赤字の圧縮です。
政府は、2020年度に、基礎的財政収支(いわゆるプライマリーバランス)を黒字化する目標を立てております。
しかし、2016年度の国と地方のプライマリーバランスは、約15兆円の赤字であり、黒字化達成は、困難だといわれております。本来は、増税分が財政赤字圧縮のために使われる予定でした。

3つ目は、国際社会から、日本の財政への信頼を得ることです。
日本の借金は、GDPの2倍を超え、先進国で最悪の財政状態です。このまま借金を増やし続ければ、日本経済の将来に国際社会からの厳しい評価を受けることになります。
2020年のプライマリーバランスの黒字化は、今では、国際公約となっております。

2015年度の国の一般会計予算の中で、社会保障関係の費用は、約31.5兆円で、国の予算の約3分の1となっており、その中でも年金と医療費が大きな部分を占め、年々増加し続けております。
少子高齢化、人口減少が進む中、「無駄遣いをなくす」だけでは、財政赤字は、解決しないと思われます。
財政赤字の主な原因である、社会保障費の拡大を抑える改革をしないまま、財政再建は不可能であり、同時に日本の成長産業を育成し、税収を増やす取り組みが必要です。

福祉大国 スウェーデンは、1990年代初めのバブル崩壊により、財政危機に直面しましたが、政府の果敢な取り組みにより、5年後には、危機を脱しました。

1993年、財政赤字がGDP比11%になり、スウェーデン政府は、翌年から財政再建に取り組みました。
年金給付や失業手当の削減、医療費の自己負担増、高所得者対象の緊急増税、社会保険料引き上げなどGDPの7.5%に相当する歳出削減、歳入拡大策を実施し、1998年までに、わずか5年間で、財政収支を黒字化させました。
勿論、日本とスウェーデンでは、財政規模も借金の規模も違います。

しかし、大事なことは、財政問題の解決に向けた、政治の覚悟ではないでしょうか。国民に丁寧に説明を尽くし、身を切る改革を行うことです。
国民の多くは、私たち現役世代の借金を、子や孫たちに先送りすることは望んではいないはずです。ましてや、ギリシャのように財政破綻に至るまで、問題を先送りするなど決して考えてはいないはずです。

増税先送りは、青森県にも大きな影響があります。
国は、増税を前提に、社会保障の充実を、都道府県にも求めております。
地域医療介護総合確保基金事業など、多くの社会保障政策は、結果的に県負担を伴います。
また、殆どの自治体は、3割自治と称し、予算の約70%を、地方交付税交付金や国庫補助金等に頼っているのが現状です。ひとたび、国の財政破綻が現実味を帯びれば、同時に、各自治体も危機に直面することになります。
これまで三村知事を先頭に取り組んできた青森県の財政改革は、着実に成果を上げ、プライマリーバランスの均衡をとることが出来ました。
青森県や他の自治体の努力を無に帰さないためにも、国の財政再建は、急務であります。

今回の増税先送りに対して、マスコミに次のようなコメントが載っておりました。

「今の政治は、与党も野党も、次の世代より、次の選挙しか考えていない。」
この批判に、私たちは、真摯に向き合う必要があるのではないでしょうか。

日本の財政再建問題を、慶応大学の小林教授は、「救命ボートのジレンマ」を例に説明しているので、紹介いたします。

何人かの集団が救命ボートに乗って漂流している状況で、ボートが沈み始めてきました。
誰か一人が犠牲になれば、ボートは沈没を免れて、残りの人は全員助かる。
しかし、もし、誰もボートから降りなければ、沈没して全員が死ぬ、といったジレンマです。

日本の財政健全化と社会保障制度の持続性の維持という課題は、まだ生まれていない将来世代も含む複数の世代間での巨大な「救命ボートのジレンマ」です。このまま日本の財政悪化を放置すれば、将来のいずれかの時点で物価の大幅な上昇によって国債の価値が下がり、実質的な債務不履行が発生します。
通貨の信認も失われ、大幅な円安で日本国民の資産は、目減りし、インフレ率や金利は激しく変動し、国民生活は大きく混乱。
市場の信認を回復するため、政府は歳出の厳しい削減を余儀なくされ、社会保障制度を大幅に縮小せざるを得なくなります。
信用が損なわれた日本政府は借入れ困難が恒常化し、統治機能が劣化して、経済成長率も長期間に渡り低迷することになります。
このような事態が起きれば、将来のすべての世代が継続的に不利益をこうむります。
一方、現在世代が自己犠牲的な精神を発揮して、増税と社会保障支出の削減によって財政を健全化するならば、将来の日本の経済社会は安定し、これから先の何世代もの人々の生活は改善していきます。

小林教授は、最後に、次のような提案をしておりました。
「政治から、独立した長期財政予測機関を設立し、その機関に、議会や政府の財政運営を、規律づける権限を与えるような民主制度の補正が必要である。」

本来は、国会、そして地方議会が、この役割を果たすべきであり、政治が問われていると感じました。

次に、オバマ大統領の広島訪問についてです。

原爆投下は、終戦を早め、結果的に多くの米兵の命を救ったため、必要であったというのがアメリカでの根強い議論です。
しかし、近年行われた調査では、若い世代ほど原爆投下に否定的な意見が賛成意見を上回っているという結果を聞き、私は、胸を撫で下ろしました。
広島、長崎に投下された原爆は、子供や女性、高齢者など、普通に日常生活を送っていた21万人もの一般市民の命を一瞬で奪いました。
パリやアンカラで行われた無差別テロと何が違うのでしょうか。

昨年、成立した安全保障関連法は、日本の未来を大きく変えるものでした。
これまで、日本の自衛隊は、平和憲法のもと、海外で、人命を奪ったことはありませんでした。ところが、集団的自衛権の成立により、同盟国の戦争に参加することが可能になったのです。
有事の際には、青森の第5普通科連隊から、航空自衛隊 三沢基地から、そして、海上自衛隊 大湊地方隊から、多くの若者が派遣されることになります。

ある60代の男性から、「自分の息子は、自衛官なので、安保関連法に、表立って反対はできない。しかし、将来、息子を戦地に送りたくはない。是非、廃止するため頑張ってほしい。」と訴えかけられました。

また、ある女性からは、「娘が自衛隊入隊を考えていたが、大丈夫でしょうか。止めさせたほうが良いでしょうか」と、問いかけられました。

近年、頻発している大災害や捜索活動では、自衛隊は、欠くことのできない存在であり、もし、他国が日本を攻撃してきた時には、命を懸けて国民を守ってくれるものと確信しております。
私たちは、その自衛官を海外の戦場に送る必要があるのでしょうか。送るべきなのでしょうか。

戦争や紛争には、必ず双方の正義が存在します。
正義や価値観は、国や文化によって大きく異なります。
日本は、どのようにして食い違う正義を判断するのでしょうか。
武力による争いは、憎しみを増加させるだけです。

有事の際、戦場へ行くのは、安倍総理でも、国会議員でもありません。
政治には、国民を守る責任と同時に、若者を戦場に送らない責任があるのではないでしょうか。

オバマ大統領が広島で行った17分間の演説は、次のように締めくくられておりました。
「世界中の子供たちが同じように平和に過ごせるようになるべきだ。それが、我々が、選び得る未来だ。そして、その未来の中で、広島と長崎は、核戦争の夜明けとしてではなく、私たちの道義的な目覚めの始まりとして記憶されるだろう。」

私たち、日本人の役割は、世界から貧困を無くすこと、そして、争いを無くすために、広島、長崎で起こった戦争の悲惨さを伝え、日本の平和主義を世界に広めることではないでしょうか。

それでは、質問です。
先ず始めに、青森県の防災体制の強化についてお伺いいたします。

熊本地震発生から約2か月が経過しました。
初めて震度7の地震が同じ場所で2度も観測され、余震も長期にわたり継続したため、被災者も行政も手探りの対応を迫られました。
報道によりますと、政府は、本震が起きた4月16日、被災地の要請を待たず、国が物資を送り込む、「プッシュ型支援」を実行しましたが、残念ながら、被災者の一歩手前で救援物資は止まってしまいました。
理由は「物資を仕分けるマンパワー不足」でした。
九州地方知事会は、災害時の支援協定に基づき、各県の応援部隊を派遣したのは、4月19日。
熊本県が市町村の状況をまとめ、人的支援を要請するのを待っていたためです。
被災自治体が、人手不足になることは何度も経験済みのはずですが、教訓は生かされませんでした。
(1) 東日本大震災の経験や、今般、熊本地方で発生した地震の教訓を踏まえ、県の地震・津波対策の強化についてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
(2) また、熊本地方で発生した地震では、避難所に必要な物資が届かなかったことが指摘されているが、災害時の物資の搬送について県としてどう取り組んでいくのかお伺いいたします。
大規模災害時には、特に、高齢者や障がい者など、社会的弱者の命が失われます。一人でも多くの県民を救うため取り組んでいかなくてはなりません。
(3) 高齢者や障がい者などの避難対策は、どのように計画されているのかお伺いいたします。

次に、災害時における医療提供体制の充実強化についてお伺いいたします。
大規模災害が発生した直後からの医療提供体制を整えることが、より多くの被災した県民の命を救うこととなります。
東日本大震災や、今般の熊本地方で発生した地震により、多くの病院が相当の被害を受け、入院患者、職員等の安全確保に賢明の対応がされたと認識しています。
大規模災害時の医療提供体制の確保については、病院の機能が存続すると言うことが重要な要素の一つではないかと考えるものです。
このため、本県において、耐震化がされていない病院については、できるだけ早期に耐震化されることが重要であると考えます。
そこで伺います。
(1) 東日本大震災の経験を踏まえ、本県の災害時における医療提供体制の充実強化に向けて、県はどのように取り組んでいるのかお伺いいたします。
(2) 県内の病院及び災害拠点病院における耐震化の状況についてお伺いいたします。
(3) また、県は、耐震化の促進に向けて、どのように取り組んでいるのかお伺いいたします。
(4) 東日本大震災の経験を踏まえ、本県では災害時医薬品提供体制を、どのように整備してきたのかお伺いいたします。

次に、青森県のインバウンド対策についてお伺いいたします。

本年3月30日、国は、「明日の日本を支える観光ビジョン」世界が訪れたくなる日本へ を策定し、訪日外人旅行者数の目標を、2020年に現在の2倍の4000万人、2030年に、3倍の6000万人と定め、具体的な施策を打ち出してきました。
この、国の基本方針を受け、去る5月24日、観光庁は、東北6県への訪日外国人旅行を推進するため、全世界を対象にした大規模宣伝キャンペーンを始めると発表しました。近年、日本を訪れる外国人が急増しているものの、東北はその流れに乗り切れていないのが現状であり、オリンピックまでに、現在の3倍の外国人旅行者を誘客する取り組みです。
おりしも、青森県では、3月に函館までの新幹線が開業し、この夏、青森県・函館デスティネーションキャンペーンが行われる予定であり、東北キャンペーンとの相乗効果が期待できるのではないでしょうか。

(1) 日本、東北及び青森県を訪れる外国人観光客の延べ宿泊者数と、本県の現状をどのように捉えているのかお伺いいたします。
(2) また、これからの県のインバウンド対策について、どのように戦略的に取り組んでいくのかお伺いいたします。
(3) 北海道、北東北3県など近隣県との連携が重要と考えますが、どのような連携をしていくのかお伺いいたします。

次に、県獣医師職員の確保についてです。

青森県は、青森県基本計画未来を変える挑戦で、「強みをとことん、課題をチャンスに」をキャッチコピーに施策を推進しています。

農業県である本県は、農林水産業を成長産業と捉え高品質な県産品を産出していこうと取り組んでおり、食の安全・安心は不可欠なものであります。そのためにも、畜産業を支える県獣医師職員については十分に確保する必要があると考えますが、年々減少してきており、近年では、新採用者の確保の困難さに加えて、退職者も増えているようです。

県は、公務員獣医師不足が深刻な状況にある中で、獣医師職員確保のために、これまでも様々な取組をしてきたものと思いますが、これからは更なる取組が必要になるのではないかと考えるものです。
そこで伺います。

(1) 獣医師職員の確保に向けた県の取組についてお伺いいたします。
(2) また、近年、採用した獣医師職員に本県出身者が少ないと聞いております。安定的に獣医師を確保するためには、本県出身の獣医師を増やすべきと考えますが、県の取り組みをお伺いいたします。
(3) 採用を増やすと同時に、中途退職者を減らす努力も必要です。獣医師職員の中途退職者の現状とその対策についてお伺いいたします。

最後に、身近な犯罪の防止の取組についてお伺いいたします。
県民の生活基盤の一つとして「犯罪の被害に遭うことなく、安全に安心して暮らせる地域社会」があると考えています。
本県では、年々、犯罪は減少していると聞いておりますが、依然として自転車を盗まれたり、車の中からものを盗まれたり、あるいは振り込め詐欺の被害に遭うなど、県民の身近なところで犯罪が発生している現状があります。
これら身近な犯罪の防止について、地域住民からの声を良く聞き、連携して対策を進めていくことで、社会全体の防犯意識が高まり、犯罪が起きにくい社会が形成されて、強盗事件や傷害など命の危険に関わる犯罪も減少するのではないかと考えるものです。
そこで伺います。

(1) 先ず始めに、県内における犯罪の発生状況とその傾向についてお伺いいたします。

(2) 身近な犯罪を防止するための県警察の取組状況についてお伺いいたします。
(3) 地域住民からの犯罪防止に対する要望の把握とその対応についてお伺いし、

以上で、壇上からの質問とさせていただきます。

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