伊方原子力発電所の現状と今後の課題について

訪問日時 平成26年5月16日 10:00〜12:00
目 的 地 四国電力・伊方原子力発電所
所 在 地 愛媛県西宇和郡伊方町九町コチワキ3−40−3
担 当 者 四国電力総務広報部広報課 浜田氏

001「伊方ビジターズハウス」には定刻より少し遅れて到着したものの快く出迎えて頂いた。
まずは、ビジターズハウス内においてこれまでの取組の説明を受け、その後用意して頂いたバスに乗車し発電所施設内を見学と説明を受ける事になった。

 

 

・愛媛県伊方町にある四国電力伊方発電所は、愛媛県の西端から九州に向かって槍のように突き出た佐田岬半島の付け根寄りに位置している。

長さ40キロの日本一狭長な半島が、瀬戸内海と太平洋側の宇和海を区切る形になっており、発電所は瀬戸内海に面している。
発電所には加圧水型の原子炉が3基あって1・2号機は共に出力56.6万kW。3号機は89万kWで一番大きく新しい。(安全審査は3号機を申請)

002・四国電力では、平成19年の新潟県中越沖地震を踏まえて自主的に免震構造の総合事務所を建設し、その二階を緊急時対策所にあてている。(これは非常事態に原子炉内の情報を集約し外部に発信する中枢といわれる拠点施設である。)当初、事故時には防護マスクでの対応をする事となっていたが、マスクの不便をなくすため空調の工事を実施し、作業の負担を軽減している。また、空調だけでなく放射線対策も強化しており、1階の窓には鉛遮蔽をとりつけることとしている。

・四国電力伊方原発は、昨年7月4日に3号機の再稼働に向けた申請を行っている。東京電力福島第一原発事故の最大の要因は津波であることから、自社の最新の想定では中央構造線断層を原因とする地震の場合、最大7mと予想している。南海トラフ地震では最大3m程度の津波とされているが、発電施設は海抜10mの高さに設置されており、想定の範囲としては安全性は高い。また、その他管理施設や電源関係は、海抜32mの台地上に設置されている。

003・使用済み燃料プールに対してのアクセスも各号機のものに直接32mの高さに設置した施設から直接行えるようである。

・電源確保対策についてはバックアップ電源車(1,500kW)が各号機に2台設置されており、1週間以内であれば充分電源を確保できる。
さらには、浸水対策についても防水扉を設置し万全の構えをとっている。電源確保が一週間以上の場合には外部配電線から1〜3号機に供給する必要がある

・発電機の安定性についても検討されている。公設発電機は水冷式であるが、メンテナンスのいらない空冷式非常用発電機も設置する。

004・森林火災からの延焼や竜巻等(最大62 m)も想定して対策をとっている。しかし、規制委員会からは、日本最大の風速は93mなので、それより基準を下げるのであれば同様の事態が起こらない合理的な説明が必要との見解が示されたため、風速100mも想定しなければならないかも知れない。

005

・水素爆発は起こらないよう対策を講じている(格納容器内に水素処理装置や電気式燃焼装置を配置)が、万が一格納容器が壊れる事を想定して、大型ポンプ車11台を3号機専用で用意し、放水砲により水と泡を格納容器の頂上までかける方法を準備中である。

・中央制御室は1号機と2号機を1ブロックとし、3号機を1ブロックとする2ブロックの体制で行っている。福島の事故を想定したシミュレータの訓練を行う事で、練度をあげている。

・冷却水対策は、濾過水タンクに6,000トン×2を準備している。それでも足りない場合の備えとして、海水を1時間に1,400トン汲み上げできるように訓練を行っている。

・管理棟を始め全ての施設でプラント並みの免震性を目指している。

以上の事から、昨年7月以降の規制委員会との対応で、他の原子力発電所と比べても、発電所の安全対策はかなり強靭化している印象を受けた。しかしながら、高いレベルの安全対策が求められる事は理解できるものの、これまでと今後の5年間で安全対策に要する費用は、伊方1か所で1,200億円にものぼるとのことであった。かなりの高額である。伊方の安全審査は終盤と言われているが、そこまで対策を行ったからといって必ず審査が通るという確証はまだない。
今回の調査では、電気事業者の安全に対する対策がここまで進んでいるのかと率直に感じた次第である。ただ、規制委員会が求める対策は現時点で本当に必要なものなのか、妥当なのかの科学的根拠も説明するべきでないかと感じた。根拠が明確でないものを推し進めるのはいったいなぜなのか。
海外の電気事業者からも言われている、対策とコストの兼ね合いも十分大事な事であるし、最終的には消費者に負担のしわ寄せがくる事を考えれば、安全とコスト負担の両立を忘れてはならないのではないか。
いずれにしても、日本型の安全性向上に向けた国・規制庁・事業者が独立した安全文化がしっかりとできなければ、日本の原子力発電所や原子力行政に対しての国民の不安は払拭されることはないと思うので、今後の取り組みに期待したい。

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