10月15日午前8時前、フランスのシェルブールにあるラアーグ再処理工場に夜明け前に到着しました。
フランスでは、10月下旬までサマータイム制を導入しており、夜が明けるのは、8時を過ぎてからでした。軍港、シェルブール市の中心から出発したのは、午前7時20分。まだ真っ暗で街中は静かでした。
しかし、ラアーグ再処理工場に近づくに従って、一本道が混雑し始めました。、ラアーグ再処理工場の通勤時間で、多くの従業員が通勤してくるので混雑しているとのことでした。
北コタンタンの最大の雇用を生み出しており、その数約5000人。3000人は、アレバ社で働き、1000人は、アレバグループ。残りの1000人は、協力会社。
これだけの従業員の多くが一斉に通勤するので混雑するはずです。
午前8時、パスポートを用意し、厳重な検査ののち、工場内に入りました。
まずは、ブリーフィング。ラアーグ再処理工場の概要が、広報班の女性によって丁寧に説明されました。
やはり、まず、特筆すべきは、ラアーグ再処理工場の情報公開に対する取り組みです。すべての情報は、包み隠さず地域の方々に公開し、常に今工場で何が起こっているのかを伝えます。
その中心となるのが、LIC(地方情報委員会)であり、メンバーは、地方議員や市民団体などで構成され、反原発団体のメンバーも含まれているそうです。
LICは、法律で決まったものなので、反対派からのあらゆる質問に対して答える義務があります。そこでは、全ての意見を表明することができ、メディアも参加しながら、議論の充実を図っているそうです。
また、独自に技術的評価をすることもできます。
また、年間3000人から4000人の許可訪問があり、主に、学校の教育活動が行われております。
また、討論会を開催し、年2回の広報誌が関係地区の全世帯に配布されます。
ラアーグ再処理工場では、1990年からガラス固化が始まりました。最初は、大きな事故はなかったもののトラブルが続きました。一時期、情報を画した時期もあり、1996年と1997年には火災もあったそうです。しかし、悪い情報を含め、全ての情報を包み隠さず伝え続けた結果、地域住民との信頼関係が築かれたと思われます。
また、情報公開と同様に、監視機関に対する人々の信頼も重要な要因でした。規制期間は、安全に対する要求が非常に高いことが信頼に繋がったのです。
徹底した情報公開と安全に対する厳しい規制。この2つがこれからの原子力行政に不可欠です。
ラアーグ再処理工場には、処理施設が2系統あり、UP2とUP3と呼ばれております。UP3は、海外からの高レベル放射性廃棄物を処理するためで、UP2は、国内向け。ガラス固化のための溶融炉は、毎年交換しています。
24時間を3チームで運営し、全体のチーム数は、5チームであり、交代で勤務しています。
以前UP2-400という溶融炉があり、1966年から1980年代後半まで稼働していました。10年かけて除染し、90年代後半に廃炉。
その時の手続きは、以下の通りです。
1. ASNに廃炉計画を提出
2. 事前に市町村役場や県からの意見聴取し、世論調査
3. 再処理施設を廃炉施設に変える国の許可(デクレ)
使用済み核燃料は、96%がリサイクルされ、4%が廃棄物となります。この廃棄物は、キャニスター(CDSC)と呼ばれる容器に入れ、50年間の中間貯蔵を経て最終処分されます。
リサイクルでは、1%がプルトニウム、95%がウランとなり、再利用されます。
フランスでは、ラアーグで再処理した燃料がフランス電力の15%を占めています。
ガラス固化することによって放射能の毒性は10分の1となり、容量は5分の1となります。
これまで27000tが処理されました。
その内、2944tは、日本からの使用済み燃料でした。
世界の使用済み燃料の75%を、ラアーグ再処理工場が再処理しました。
現在、貯蔵能力の7割が使用中であり、能力増強のための拡張工事が行われております。新しい建屋は、自然通風による冷却で、4500本の追加貯蔵が可能です。常に、技術交流を行い、最新の知見が導入されています。
中央コントロール室、せん断、ガラス固化それぞれにバックアップがあり、故障時には、そのバックアップを使いますが、中央制御室には、それ以外にも、最終バックアップがあり、非常時に備えています。
私たちが、福島の原子力発電所事故によるラアーグ再処理工場への影響を尋ねたところ、次の説明がありました
「私たちは、関係地域住民との長期的な信頼を築いており、福島事故の影響がないということへの自信があります。今回の福島の事故の状況は、逐次、地元に説明しており、人々は恐れてはいません。原発は必要であり、安全性と情報公開をし、福島を例として、自信に対する裕度など、更なる安全性の強化を行いました。
昨年、ASN(原子力安全機関)がストレステストを実施し、福島の事故がフランスで起きた時を想定。技術的な強化策だけではなく、危機管理という課題を学びました。
事故時にどのようにチームを編成するのか?
今後、シミュレーションを検討しているそうです。
3時間以上に及ぶラアーグ再処理工場の現場視察ののち、私たちは、シェルブール市長、地域の代表で酪農家のアメル夫妻とともにランチをとりながら、ラアーグ再処理工場と地域が共に歩んでいる現状を聞きました。
地域との信頼関係が原子力政策の要であり、信頼なくしては、事業の継続はあり得ないと感じました。