屋久島世界遺産調査

と   き  平成25年8月26日

と こ ろ  屋久島町役場宮之浦支所

調査事項  世界遺産「屋久島」の自然保護及び観光振興について

説 明 者 屋久島町環境政策化自然環境係長 木原 幸治

自然環境係  岩川 卓誉

○    屋久島町の概要

鹿児島市より南方130kmの洋上に位置し、中心部に1936mの宮之浦岳を擁する円錐状の島で海岸線の亜熱帯気候から頂上部の冷温帯気候までの植物の垂直分布がみられ、そのため日本の植物種の7割以上の1900種以上が生育し固有種約40種、南限とする植物140種、北限とする植物約20種と「東洋のガラパゴス」といわれている。また蘚苔についても日本に産する約1600種のうち約600種が生育している。

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面積は属島である口永良部島を含めて約541平方キロ。島の9割が森林・原野で、しかも島の8割が国有林で占められる。

人口は平成22年国勢調査では13,589人、6,248世帯で、平成25年7月現在では13,583人、6,883世帯と過去の減少からほぼ横ばいの状態に好転してきており、他の離島では見られない傾向にあります。

要因としては世界自然遺産登録以来の観光ブームによる若者を中心としたIターン者の増加がみられる。また、高齢化率については28.79%で40%を超える集落も4集落あり、限界集落への進行も危ぶまれている。

産業構造等については22年国勢調査では第1次産業が13.2%、第2次産業14.9%、第3次産業71.6%となっており農業では耕地が乏しいため、山腹の斜面を利用したポンカン、タンカン、パッションフルーツなどの果樹類の他、お茶の栽培が盛んになっている。林業はスギ材価格の低迷と需要不足のため産業としてはなりたっていない。水産業は鯖やトビウオ漁が行われているが、いずれにしても第一次産業は後継者不足や流通対策、サル・シカによる食害など大変厳しい状況にある。

第2次産業では炭化珪素の化学工場、薬剤工場、焼酎工場がある。地場産業としては零細な家族経営であるが屋久杉加工場、鯖節製造工場がある。

第3次産業が近年大きなウェートを占めているがこれは宿泊施設や飲食店などの観光関連産業の進展によるもののほか、大型店の進出も要因となっている。

○    自然景観指定、100選等

霧島・屋久国立公園指定(昭和39年)

世界自然遺産登録(平成5年)

永田浜ラムサール条約登録(平成5年)

口永良部島全域が霧島屋久国立公園(平成19年)

屋久島国立公園指定(平成24年)

「屋久島」が日本の自然100選(昭和58年)

「宮之浦川流水」が全国名水100選(昭和59年)

「縄文杉」が新・日本の銘木00選(平成元年)

「大川の滝」が日本の滝100選(平成2年)

「千頭川の渓流とトロッコ」日本の音風景100選(平成8年)

「紀元杉」が森の巨人たち100選(平成12年)

以上のとおり貴重な環境を守るための取組は歴史が長く、現在までの地域の取組をあらわしていると思われる。

しかしながら世界遺産地域の保護制度において各省庁の法律が複雑に絡んでおり実態に即した運用を難しくしている。

環境省所管では、自然環境保全法-屋久島原生自然環境保全地域(花山地区12.19平方キロ)、自然公園法-屋久島国立公園(島の42%)

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林野庁所管では、屋久島森林生態系保護地域-国有林野管理経営規定(島の30%)

文部科学省所管では、文化財保護法-特別天然記念物屋久島スギ原始林(43.92平方キロ)

鹿児島県指定として、県指定鳥獣保護区-鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律

遺産地域において5つの県指定鳥獣保護区と重複している。

農林水産省・鹿児島県指定では、保安林が森林法によって水源涵養、土砂流出防備、保健保安林に指定されている。

そのため以下の屋久島世界遺産の保全管理に関わる機関・団体が、それぞれの役割と助言・連携・協力することを目的として運用されている。

遺産地域管理機関 <連絡調整>

環境省九州地方環境事務所

林野庁九州森林管理局

鹿児島県・鹿児島県教育委員会

屋久島町

科学的な観点からの検討

屋久島世界遺産地域科学委員会

利用の適正化

屋久島山岳部利用対策協議会

屋久島地区エコツーリズム推進協議会

観光客の入込客数は平成5年と比較して、15年間で約2倍に増加している。世界自然遺産登録の効果が表れており年次の増減はあるもののリーマンショックや東日本大震災など景気の変動局面以降は再び増加している。

特に大きな要因としては交通インフラの拡充の影響が顕著にみられ、平成16年には高速船の就航し2社 8船 7便/日、航空路の状況は種子島―鹿児島を初め平成22年に種子島―大阪1日1便、平成元年に屋久島―鹿児島1日5便、平成21年に屋久島―大阪1日1便、平成23年に屋久島―福岡1日1便という状況になっている。

島の基幹産業として現在は観光も重要な位置を占めている。

宿泊施設の状況は例えば種子島1市2町で651件なのに対して屋久島は1町で2187件と際立って多い状況にある。

また、現在ガイドは約200名あり大きな収入源となる一方、エコツアーの質の向上に貢献している。しかしながら近年ではお金をかけない若者が増え、登山者の約4割余りはガイド無しで行うようになり、トイレの維持費の捻出や管理、歩道の整備等環境維持の取組にも問題が顕在化してきている。そのため、平成16年度からガイドの行政認証・登録を進めているが認証制度はガイドを中心とした組織で検討中である。

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また、縄文杉登山については10年で登山者が3倍に増えるなど、山岳部の自然環境を保全するため、山岳部のトイレのし尿の人力搬出や携帯トイレの利用促進、一部登山道の補修などの取組を進めている。屋久島山岳部保全事業は基金として一口500円を入山者から募金を募っている。平成24年度の収入金額は19,832千円で、支出は22,794千円で内訳はし尿運搬経費が86%を占めている。

トイレの問題として経費の他にも改修もまた大きな問題である。すでに設置してあるトイレはかなり古いものであるが、国も県も改修は認めていない。携帯トイレへの以降は利用者の実態と合わず頭を悩ませている実情にある。

いずれにしても今後の屋久島世界自然遺産を環境の保全と安全を維持しつつ観光客の利便を向上させるための議論を国も県もしっかりして行かなければならない。前段で紹介しているが世界自然遺産と自然公園法を都合のいいように規制すために使いまわす国の対応の仕方には法の遵守と現実を超えるためのもう一段上の国と県と地元3者の努力を求める必要があると実感した。

本県も世界自然遺産白神山地を有しどうようの課題が今後出てくるものと思われる。
平成25年8月27日

屋久島縄文杉までの登山と歩道整備状況の現地調査 天候は晴れ

1ヶ月に35日雨といわれる屋久島で終日快晴は珍しいとの事。ガイドに先導され歩道状況や歴史、植物、蘚苔や水質などの説明を受けながら往復10時間の行程に挑む。

 

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