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議員派遣結果報告書(2020-01-08)のつづき

仮に、魅力化が達成できず、島前高校が廃校となった場合の地域未来予想図が描かれています。

なりゆきの未来


本土行の最後のフェリーが動き出した。
この島と一緒に死ぬといってきかない老人だけが島に残った。 
錆の浮いた港湾施設が遠ざかる。岸壁に書かれた「ござらっしゃい」の文字がむなしく波に洗われている。永訣を告げる最後の汽笛が、湾内に響き渡った。丘の上には、ボロボロになった旧島前高校の校舎が、悲しそうに佇んでいた。
この島前地域に襲い掛かってきた、過疎、少子高齢化に伴う地域の衰退、そして高校の存続の危機、かつてこの状況に抗い、立ち向かった人々もいた。
地域と協働した特色ある授業、公立塾の設置、島外からの生徒募集など、多くの抵抗や困難がある中で打てる手は打った。高校魅力化にむけた様々な取り組みは一時的に脚光を浴び、高校は復活したかのように見えた。しかし、永くは続かなかった。
生徒増と学級増により「危機が去った」と安心したことで、高校魅力化に向けた地域の情熱は消えていった。頑張っていた教職員や関係者も移動や退職などで移り変わっていき、勢いは失われていった。島外から入ってくる生徒は次第に減り島前3町村の中学生の数の減少と相まって、20XX年秋、島根県は島前高校の学級減を発表。これにより島前高校の命運は尽きた。魅力化の流れは完全に終わり、衰退化に向けた逆行が一気に始まった。学級数が2学級から1学級に減っていく事で、教職員数は段階的に減り、難関大学への進学は困難となり、ヒトツナギ、軟式野球、バスケ、バレー、レスリングなどの部活動の休部も続き、島前高校への志願者は更に拍車をかけて減っていった。重なる赤字により公立塾や寮も閉鎖、為す術もないまま島前高校は隠岐高校の分校となり、その数年後廃校が決まった。
島前高校が廃校になった後、島前地域の子供連れのUターンは途絶え、逆に子供のいる家族世帯の島外流出に歯止めがかからなくなっていった。知夫村では、子どもが生まれない年が何年も続き小中学校は休校になり、高齢化率は70%を超えていった。海士町は若いUIターン者の流出が続き、2校あった小学校は、統廃合され、第3セクターも潰れていった。西ノ島町では、漁業や畜産業の担い手が途絶え、子どもや若者の減少により精霊船(シャーラ船)も十方拝礼(しゅうはいら)も消えていった。赤字が続いた隠岐汽船は寄港地の集約化とダイヤの効率化を図り、隠岐で一港、1日1便、フェリー1隻体制に移行していった。
これにより島前の観光業はさらに衰退していった。こうした状況において、島前に住みたいという医者はいなくなり、島後や本土から医者が定期的に通ってくる体制に変わり、住民の医療に対する不安は高まるようになった。3町村ともに財政状況が悪化し行き詰っていった結果、隠岐の島町との合併を決断。編入合併後、住民への福祉や医療、行政サービスは低下し、人口の流出は一層激しくなった。「最後まで島に残りたい」と言っていた高齢者たちも診療所や商店も閉まり、廃墟と化した集落の中で話し相手もいなくなっていく中、島に残ることさえ厳しくなっていった。そして、ついに数人だけを残して苦渋の集団離島が始まった。
こうして、数千年つづいてきたこの島前の歴史と文化は、22世紀を迎えることなく幕を下ろすことになった。その後、島前近海では外国漁船の違法操業が繰り返されるようになり、荒れ果てた集落には不審な人影が見えるようになったという。
多くの過疎地域と高校に希望を与えていた島前高校の失墜により、全国の高校の統廃合は一気に加速。ほとんどの過疎地域から高校が消え、子どもや若者が消え、希望や活力が消え、国土の大半を占める地方は疲弊し、日本の少子高齢化と人口減少は加速度的に進んでいった。

これは一つの未来。
手綱を緩めるとまっしぐらに向かっていくであろう未来の姿である。
このなりゆきの未来を回避し、意志ある未来をたぐり寄せる為にも、魅力化プロジェクトは更なるビジョンを掲げ、取り組みを継続していく必要がある。と締めくくっています。

議員派遣結果報告書(2020-01-08)

令和2年1月8日

青森県議会議長 殿

青森県議会議員 渋谷 哲一

議員派遣結果報告書

下記のとおり議員派遣を終了しましたので、その結果を報告します。

1. 派遣目的
(1) 鹿児島県、山口県 及び島根県教育委員会における障がい者雇用の現状と対応策についての調査
現在、青森県教育委員会では、障がい者法定雇用率は、1.54%となっており、国が定める2.4%を達成していない状況が長年続いており、解消にむけた計画すら描けていない状況です。他県の事例を参考に、本県教育委員会が、障がい者法定雇用率2.4%を達成するためのプランを探るために、3県の教育委員会を調査いたします。
① 鹿児島県教育委員会の障がい者法定雇用率は2.47%となっており、国が定める2.4%を上回っております。
(算定の基礎となる職員数は、11,458.5人と、青森県の9,228.5人を上回っています)
② 山口県教育委員会の障がい者法定雇用率は2.35%となっており、国が定める2.4%を、僅かに下回っております。
(算定の基礎となる職員数は、8,081.0人)
③ 島根県教育委員会の障がい者法定雇用率は2.48%となっており、国が定める2.4%を上回っております。
(算定の基礎となる職員数は、5,727.0人)
(2) 島根県立島前高校における特色ある学校運営基本方針と運営状況を確認し、県教育委員会と当該高校との関わり方や連携の実態などの調査
島根県立島前高校は、離島にある県立高校でありながら、生徒数のV字回復を果たし、今なお増加させている、全国でも稀な学校です。当該高校の運営方法と教育委員会の対応と方針を調査し、生徒数が減少し続けている青森県立高校の統廃合の今後の在り方を再考する参考としたい。


2. 派遣場所
(1) 鹿児島県庁
〒890-8577 鹿児島県鹿児島市鴨池新町10番1号
(2) 山口県庁
〒753-8501 山口県山口市滝町1番1号
(3) 島根県庁
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地

3. 派遣期間(日程表添付)
令和元年12月16日(月) ~ 12月18日(水)

派遣結果報告

1. 派遣目的、派遣場所は議員派遣結果報告書のとおり調査場所、日時、内容、成果について
⑴ 鹿児島県庁 鹿児島県教育委員会
① 日時 令和元年12月16日(月) 15:00~16:00

② 内容
㋐鹿児島県内の公立学校数、生徒数及び教員数
小学校   502校、児童生徒数 89,169人、本務教員数 7,209人
中学校   214校、      42,417人、      3,859人
義務教育学校 3校、       641人、        75人
高等学校   68校、     31,442人、      2,916人
特別支援学校 16校、      2,313人、      1,247人
合計  803校、児童生徒数165,982人、本務教員数  15,306人

㋑鹿児島県教育委員会の障がい者雇用率の推移(法定雇用率)
H22 1.50%(2.00) H27 2.22%(2.20)
H23 1.45%(2.00) H28 2.26%(2.20)
H24 1.61%(2.00) H29 2.28%(2.20)
H25 1.88%(2.20) H30 2.47%(2.40)
H26 2.10%(2.20)

㋒障がい種別の雇用数及び雇用形態
主に身体障がい者

㋓障がい者雇用促進のための取り組み
平成23年度
a.障がい者特別選考の申請要件を改め、県外共住者への受験資格を拡大
b. 障がい者特別選考採用職種の拡大。教諭、養護教諭、栄養教諭、実習助手
c.障がい者雇用促進プロジェクトチーム(PT)を教職員課から教育委員会全体への拡大設置
d.障がい者である教職員の状況調査の改善
現職教職員の障がい者のより正確な状況把握のため、H25年度からは、障がいのある教職員が申告しやすい環境にするために、原則として全教職員から申告書を受領することとした。

平成24年度
a. 教員等選考試験の障がい者特別選考の見直し
1次試験の教職教養(教諭、養護教諭、栄養教諭)または、一般教養(実習助手)の試験を免除
b. 県立高校に校務補助員を配置
県立高校の一般用務員に代えて、非常勤の校務補助員2人を配置し、うち1人を障がい者とした。(H24年度は、10校で10人障がい者を雇用)
H25: 37校37人
H26: 47校47人
H27: 51校51人
H28: 56校56人
H29: 56校56人
H30: 58校58人
R1:  58校58人

令和元年度
a. 障がい者を対象とした県職員採用選考試験の受験資格等の見直し
従来は身体障がい者に限っていた受験対象者に知的、及び精神障がい者を追加
「自力により通勤ができ、かつ介護者なしに職務の遂行が可能な者」及び「県内に居住する者」という要件を撤廃

㋔過去5年間の採用状況
正規職員 教育職員:  2名
正規職員 事務職員:   5名
非常勤職員 校務補助員: 58名

㋕校務補助員の雇用の状況
ハローワークへ求人票を提出
・業務内容は、電話・窓口対応、県境整備、文書受付・配布業務、事務補助
・年次的に県立高等学校の用務員に代えて校務補助員を1校に2人配置し、うち1人は障がい者を雇用
・1年間の非常勤職員、20日/月、6時間30分/日勤務、日額支給
・配置先は県立高校
・過去5年間の採用者数 58人

③ 成果
青森県教育委員会も長年にわたり、法定雇用率を順守することができず、現在では、法定雇用率を守るための計画すら示されていない状況です。1、2年で急に順守できるとは考えていませんが、道程を県民に示す必要があります。
そこで、鹿児島県教育委員会の取り組みを参考に、青森県の現状にあった年次計画を、策定すベく、次の提案をいたします。
1. 青森県教育委員会に障がい者雇用の特別プロジェクトチーム(PT)を作る
2. PTによる「青森県教育委員会障がい者雇用5年計画」を策定
3. 青森県知事部局への協力要請
4. 特に、県立高校への非常勤職員、校務補助員の配置を検討する


⑵ 山口県庁 山口県教育委員会
① 日時 令和元年12月17日(火) 13:00~14:00

② 内容
㋐障がい者雇用の経緯
H29: 法定雇用率2.21% (教員等1.40%、職員7.21%)
H30:      2.35% (教員等1.47%、職員7.45%)
R1 :      2.13% (教員等1.33%、職員7.32%)

㋑障がい者数
129名(重度換算後 188名) (正規職員113名、 正規職員以外16名)
㋒障がい区分
主に身体障がい者
㋓今後に向けた具体的取り組み
・県立高校の非常勤職員枠の不足分を解消((教員等1.4%、職員7.21%)現在、12校中8校で雇用)
・事務局の非常勤枠の不足分の解消(現在、8名の枠に対して7名雇用)
・県立高校非常勤枠の拡大や障がい者手帳所持者の申請増加
県立高校非常勤枠(既存の枠を埋める) 4名
きらめきワークセンター(既存の枠を埋める)1名
県立学校事務(正規採用) 1名
小・中学校事務(正規採用) 1名
新規の県立高校非常勤枠拡大(R1調査で10名程度新規申請) 16名

㋔今後の障がい者雇用計画案R2
雇用算定基礎職員数 : 8,685名
障がい者数 : 208名
障がい者雇用率 : 2.40%
㋕きらめきワークセンター

・県における障がい者雇用を推進するため、教育庁教育政策課内(山口県庁13階)にきらめきワークセンターを設置(H23年4月1日~)
・山口県では、山口県内の障がい者の雇用の促進を図るため、知的障がい者、精神障がい者及び発達障がい者を対象とした非常勤職員を募集し、きらめきワークセンターで支援職員の支援のもと、業務に従事してもらう
・職員 7名 支援職員 2名
月17日勤務 8時30分から17時15分までの勤務で、月給制
任用期間は1年間
・仕事の内容(事務補助)
文書の分別、シュレッダー、書類の発送準備、リーフレットの修正
文書の集配(てい送業務)
データ入力、会場準備・受付
・受験資格
・過去3年間にきらめきワークセンターで任用された経験のない者
・きらめきワークセンターで任用終了後も、民間企業等での就労を目指し、継続して働く意欲のある者

③ 成果
山口県で特筆すべきは、きらめきワークセンターでの知的、精神、及び発達障がい者雇用の仕組みを県全体で考え、支えている点です。支援職員2名が8名の障がい者の仕事を支え、継続して働く意欲を醸成する環境を作っています。その中でも、業務の切り出しが最大の課題です。継続して障がい者に働いてもらうためにも安定的な継続した業務内容が必要です。山口県知事部局の全面的な協力により、この問題を解決しています。
青森県も知事部局と一緒に県教育委員会の障がい者雇用問題を解決することが必要です。山口県のきらめきワークセンターを参考に、青森県庁内にも障がい者ワークセンターを、県教育委員会のもとに設置すべきです。
⑶ 島根県庁 島根県教育委員会 総務課 人事法令グループ
① 日時 令和元年12月18日(水) 10:00~11:00

② 内容
㋐障がい者雇用の推移
H29 : 実雇用率  2.28(2.20%) 算定基礎職員数 5、758人
H30: 2.48(2.40%) 5、727人
R1: 2.52(2.40%) 5、730.5人
㋑障がい者の雇用の状況
正規職員 76名(教育職員 63名、 事務職員 13名)
嘱託職員 30名(教育委員会事務局 6名、 特別支援学校 24名)
㋒法定雇用率達成に向けた取り組み:障がい者枠の応募要件の見直し
教員・実習助手の採用試験から次の2要件を撤廃
自力通勤可能な方
介助者なしで教員として職務の遂行が可能な方

・小中学校の事務職員
点字による受験を可とした
㋓障がい者就業支援事業
・事業の3つの目的: 障がい者の一般就労の推進、
教育委員会におけるる障がい者雇用の推進、
学校現場における多忙感の解消
各特別支援学校の非常勤嘱託職員として雇用し、会社に近い形で勤務しながら、職業能力、職業意識、そして、対人技能等を身につける場を提供する。
・教育庁総務課、特別支援学校等にワークセンターを設置し、障がい者を採用
・人員配置: 「障がい者3名 + 支援に当たる嘱託職員1名
・配置所属;16所属 教育庁総務課
教育事務所(1事務所)
埋蔵文化財調査センター
図書館
特別支援学校(全12校)

・勤務体制
原則130時間勤務
遅刻、早退等、勤務を指定していた日に出勤できない場合は、欠勤処理
・支援員の仕事内容
業務の洗い出し・計画・調整
仕事の支援
ステップアップに向けた連携

・ 障がい者就業支援事業による雇用期間後の就業先
 H26以降、特別支援学校で採用した者のうち、3年間の期間満了又は途中退職者が48名
 うち、退職後、一般就労したものが約4割、福祉就労した者が約1割

③ 成果
島根県教育委員会での障がい者雇用では、特に非常勤嘱託職員を各特別支援学校に配置するという取り組みが行われている。青森県でも同じような取り組みが行われているが、今後、この仕組みを拡大していくべきです。採用の仕方など、柔軟な見直しが必要ですが、更なる採用のポテンシャルが考えられます。青森県の地域性を考えながら、採用拡大を目指していきます。

⑷ 島根県庁 島根県教育委員会 教育指導課
① 日時 令和元年12月18日(水) 11:00~12:00

② 内容
㋐現在、生徒数減少のため全国のそして青森県内の公立高校で統廃合が進められております。その中で、島根県立島前高校が離島の公立高校として廃校寸前であったにもかかわらず、生徒数のV字回復を果たし、全国から注目を集めております。今回、島前高校の取り組みの背景に、鳥取県教育委員会がどのように関わり、どのような支援を行ってきたのか調査してきました。

㋑ 県外生徒募集
⑴ H14.4.26 島根県教育課程審議会の答申「島根県立高等学校入学者選別方法の改善について」県外からの受験生については、県内出願者に影響がない限り、認めるべきである。
⑵ H15年度入試から
離島・中山間地域「横田、島根中央、矢上、津和野、隠岐島前、隠岐」+ 水産高校「浜田水、隠岐水」の8校で積極的な県外募集に取り組んだ・
⑶ H24年度入試から上記8校に関して、身元引受人による県外生の「4名制限」を撤廃し、各校で県外生徒数の上限を定めることとした。
⑷ H25年度入試から「飯南」を加え、H27年度から「吉賀」を加え、各校で県外生徒数の上限を定めるとした高校が10校となった。
⑸ H28年度入試から、原則として身元引受人による県外からの受け入れ制限4名を撤廃。
ただし、松江市内、出雲市内の高校、県西部の地域外入学制限がある高校、並びに分校、定時制高校は、この制限4名を維持。
このことにより、「安来、情報科学、大東、三刀屋、邇摩、江津、江津工業、浜田商業、益田翔陽」の9校が加わり、各校で県外生徒数の上限を定めるとした高校が19校となった。
⑹ 令和2年度から県西部の地域外入学制限の撤廃に伴い、「大田、浜田、益田」が県外からの受け入れ制限4名の対象校から除外され、恰好で県外生徒数の上限を定めるとした高校が22校となる。
⑺ 県による県外の生徒への経済的支援はしていない。地元自治体による寮費補助、帰省時の旅費補助など。

⑻ 入学選抜に関すること
県外の生徒が島根県の学校を受験する理由、志望する生徒の傾向(成績面や生活面など)
(志望の決め手)
学校の雰囲気、教育環境、体制、進学実績が良い
希望の学科がある(水産・農業)
部活動が魅力
寮があること、親の勧め、充実した生活が送れそう、自立したかった、地域の人々の温かさ等
(志願する生徒の状況)
かつては生徒指導上苦労することもあったらしいが、現在では学習や部活動を目的として都会地から入学してくる生徒がほとんど。
県外の生徒の保護者代理人に関する事項
〇保護者が県外に居住している場合には、県内に居住している確かな身元引受人があれば、県内の公立高校を受験することができる。
〇身元引受人は原則として志願者の親族である祖父母、おじ、おば等。それ以外の場合は、当該校校長が身元引受人を認めて出願を許可することができる。
〇受験者または保護者と身元引受人の関係を示す、民生児童委員の照明(様式自由)または、その他それを証明する資料(様式自由)が必要となる。
選抜枠(県外枠)県外からの受験生の選抜に関する配慮事項
特に配慮を要する事項はないが、寮の収容定員や地元の中学生の進路保障には十分配慮するよう通知している

㋒県立高校魅力化プロジェクト
(1) 策定にあたって
〇島根県の中学校卒業者 1989年の約12600人から2018年の約6200人と半減。
〇国の動きは、高大接続改革実行プラン(高等学校、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革)と学習指導要領の改訂(新しい時代に必要となる資質・能力の育成)
〇H21年2月に「県立高等学校再編基本計画」では、学科改編や学級数の見直しなどが行われ、1学年4学級以上8学級以内を決定(H30 .4全日制課程第1学年の平均は、3.77学級)
〇H30年3月に「今後の県立高校の在り方検討委員会」からの提言、「2020年代の県立高校の将来像について」を受けた。この提言は、高校教育の特色や魅力を作り出していくのかという、教育の質的な向上に力点が置かれたものである。
この提言を受け、2020年代の県立高校における教育の基本的な方向性と具体的な取り組みを示した「県立高校魅力化ビジョン」を策定し、向こう10年間の方向性と前半5年間の具体的な取り組みを示す。
(2) 策定の方針
島根県は、これまで地域と連携・協働しながら「教育の魅力化」に取り組んできた。それは、島根県の子供たち一人一人に、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓くために必要となる「生きる力」を育むため、学校と地域社会がその目標を共有し、協働を図りながら、島根の教育をより良いものに高めていくこと。離島・中山間地域の高校だけでなく、市部も含めたすべての高校が、この考え方を市域社会と共有するとともに、豊かな自然、歴史・伝統、文化などの地域資源を生かしながら魅力ある高校づくりを推進する。
(3) 県立高校魅力化ビジョンの概要
第1章 生きる力を育む魅力ある高校と地域づくりの推進
地域に根ざした小さな高校が魅けた大きな教育効果を全県に広げ、全国に誇れる島根らしい魅力ある高校づくりを進める
〇地域協働スクールの実現
〇地域資源を活用した特色ある教育課程の構築
〇多様な学びの保証
〇「学びの成果」の捉え方、示し方の開発と、学校評価の改善
〇「しまね留学」の推進
第2章 生徒自らが選び、学び、夢を叶える高校づくりの推進
主体的な学習を促し、個性、適正、志向性に応じた多様な学びを生徒一人一人が追及できる、魅力ある高校づくりを進める
〇「求める生徒像」の確立と入学者選抜方法の改善
〇特色ある学科・コースの設置による、主体的な学びの推進
〇生徒の主体性が発揮される高校づくりの推進
〇学びのセーフティーネットの構築
〇インクルーシブ教育システムの推進
〇ICTを活用した授業改善の推進

第3章 将来を見通した教育環境の整備
将来を見通した各高校・指導の在り方の実現に向けた環境整備を推進する
〇地域別の高校の在り方
〇教員の働き方改革、教員の確保と育成

(4) 島根県が目指す魅力ある高校づくり

〇島根県における高校魅力化とは
生徒一人一人に、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓くために必要となる「生きる力」を育むことを目指した、地域社会との協働による魅力ある高校づくりのことです。
〇誰にとっての魅力化なのか
生徒たちにとっての魅力です。また、その生徒たちの保護者、教職員、そして生徒や学校を支える地域社会の人々にとっても魅力ある高校づくりを島根県は目指します。
〇高校魅力化の目的とは
生徒一人一人に、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓くために必要となる「生きる力」を育むことです。また、それを通して、子供を含む若い世代が、この地域で「学びたい」「生きたい」「子供を育てたい」と思う、魅力ある地域づくりを推進していく事です。
〇島根らしい高校魅力化とは
・豊かな自然、歴史、伝統、文化といった地域それぞれのみりょくや教育資源(ひと・もの・こと)を
生かす、地域社会に開かれた高校づくりです。
・少人数ならではのメリットを生かし、生徒一人一人の魅力や個性を伸ばし、自己実現を支援する、主体性と多様性を尊重する高校づくりです。
・温かな人のつながりや勤勉で粘り強い県民性を生かし、生徒も大人も共に学び続ける、対話的・探求的な高校づくりです。

〇高校魅力化において大切なこと
魅力ある高校づくりの具体的な取り組みに、定まった答えはなく、生徒・保護者、教職員、地域住民等との主体的な対話通して、各高校・地域の特色に応じて取り組まれていくものです。
そのため、学校に関わる我々大人たちも自身も、子供たちと地域社会の未来を見据えて、主体的・対話的に深く学び続ける姿勢であることが重要です。

③ 成果
今回、青森県立高等学校教育改革推進計画第2期実施計画への参考にすべき、様々な考え方を島根県での改革から学ぶことができました。特に、島根県では県立高等学校再編成基本計画が平成21年に策定されていましたが、平成30年に、新たに「県立高校魅力化ビジョン」を策定しました。その柱は、合理性だけではなく、島根県の高校の魅力化を通じて、地域との協働、子供たちの自主的な学びなど、教育の本質的な向上に力点が置かれたものでした。
青森県は、間もなく、青森県立高等学校教育改革推進計画第2期実施計画を策定いたします。第1期計画の反省点も踏まえ、今後の青森県の教育の方向性、そして地域と子供たちの在り方を考え、島根県教育委員会の取り組みと、島根県立島前高校の挑戦の優れた部分を青森県の未来に生かすことが必要です。一緒に進めて参ります。